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点滴の落ちる音だけが病室に響いて、居心地が悪い。
悟くんは椅子に座ったままピクリともしないから、寝ているのか起きているのかも分からない。
「……美咲ちゃんの様子どう?」
小一時間ほどたった頃、控え目に病室の扉が開かれて双子がひょこっと顔を出した。
横たわる美咲を見るや否や、駆け寄る双子の顔は焦っていると言うより呆れていた。
「また無理して…、いい加減学びなさいっての」
「一生懸命なんだって…、そう言ってやるなよ」
眠っている美咲の髪に指を絡めて、バーカ…何て軽口お叩きながら会話をする弟たちに驚いたよ。
何なの?
「…何でお前ら、そんな普通に会話してんだよ」
美咲が身体弱いって知ってるだろうに、何でそんな平然としていられるんだよ。
肺炎だぞ?風邪が悪化したから…俺が、朝ちゃんと止められなかったからこうなったんだぞ!?
「春くんはさ、何て言うか…美咲を何だと思ってんの?」
俺の言葉に溜息を付く弟にカチンと来なかったわけじゃないけど、それよりも…
言われた言葉のほうが気になった…
「どういう意味だよ…」
「美咲は、もう守られてばかりだった子供じゃないって事」
年齢の事か…?年齢なら分かってる、二十歳の誕生日は盛大に行ったんだから。
「分かってませんよ、この人」
「春くんだからね」
失礼な弟たちだ…
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