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再び訪れた沈黙。
「…んっ…」
それを破ったのは、眠りから覚めた美咲の声。
「美咲ちゃん、大丈夫?」
ベッドの傍らに座っていた悟くんがそっと顔を覗き込むと、不思議そうなに瞬きする美咲が見えた。
「あれ…おれ…」
きょろきょろと病室を見渡して、勢ぞろいした俺たちに気づいた瞬間くしゃ…って顔がゆがんだ。
「…俺言ったよな、倒れたら大変だから仕事休めって」
「…春ちゃん…」
悟くんの横に立って冷ややかに見下ろすと、今にも泣き出しそうなくらい瞳が潤んだ。
今日は泣いたって許してやらない。
俺が、俺たちが何時もどれだけ心配してるか知ればいい…。
「無理して、結局皆に迷惑かけてんだぞ」
「っ…ごめ、…」
「春くん、美咲はまだ万全じゃないんだから…お説教は退院してからで良いんじゃない?」
俺の服の裾をチョイチョイ摘んで、変わらない穏やかな顔をした悟くんが首をかしげた。
だけど、今言わなきゃきっと学ばない。
また、この先…何度も何度も無理して、こうやって倒れたら…
「美咲だって馬鹿じゃないよ。本当に無理なら、自分で休む…」
「頭ごなしじゃなくてさ、ちゃんと言い分聞いたらどう?」
ベッドの向かい側に移動した双子は、愛しそうに美咲の頭を撫でながら呟いた。
お前達が、皆がそうやって甘やかすから…
同じ事を繰り返すんだ…。
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