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兄弟達が一旦家に戻った夜。
薬のおかげか、再び眠りに付いた美咲の顔を眺めながら、俺は小さく溜め息をついた。
肺炎一歩手前とは言え、風邪くらいでやっぱり大げさだったのかな…
「過保護…過保護かぁ…」
あぁ…溜め息が止まらない。
数日後、すっかり元気を取り戻して退院した美咲。
多少の気まずさを覚悟していたけど、全く問題はなく日々をすごしている。
そして、半月も経った今。
本屋の一角に、弟の姿を見つけた。
手に取った1冊の本は、普段縁の無い女性誌で、無邪気な笑顔を浮かべる弟が表紙を飾っていた。
躊躇いがちにページをめくると、やはり無邪気な笑顔。
少し瞳が潤んでいるのは、例の風邪を引いた時に撮影したものだからかもしれない。
写真の横に、申し訳程度に記載されたインタビューに目を走らせたら、今度は躊躇い無くレジに持っていった。
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