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~♪~~♪
ソファで寄り添って、眠ってしまいそうな心地よいまどろみの中で聞きなれた着信音。
「ふぁぃ…もしもし」
俺の膝を枕に眠る悟くんを起さないように携帯を手繰り寄せて耳に当てると、聞き覚えの無い声が聞こえた。
『あ、MISAKIさんのご家族ですか?夜分すみません…』
申し訳なさそうな声の後ろで、何だか騒がしい聞き覚えの有る声もした。
『今、家の前に居るんですが…』
モデル仲間と飲んでいた美咲は、シコタマ飲んで泥酔しているらしい。
『しゅーんちゃーん!』
電話越しに聞こえる陽気な声に、少しだけ眉が寄る。
「今開けますね、すみません」
酔っ払いの面倒なんて、長々見させる訳も行かないから…
悟くんの頭を起さないようにソファに寝かせて、ふら付く足で玄関に走った。
下の弟たちを起さないように、静かに…でも急いで。
「美咲っ!」
「うひゃひゃ…春ちゃん!」
玄関の扉を開けた瞬間、覆い被さるように抱きついて来たのは紛れも無く弟の美咲。
香る甘ったるいアルコールの匂いに、俺まで酔いそうになる…
顔を真っ赤にして、普段の数割り増しで陽気な雰囲気に頭が痛くなる。
「ほら、送ってくれたお友達に有難うは?」
「うふふ…あっくん、大好き!!愛ちてるぉ」
俺に抱きつきながら、送ってくれた…多分後輩くんに満面の笑みで手を振る美咲。
呂律が回らないくらい、酔っ払っているコイツの事だから言葉に意味は無いんだろうけど、何となく胸がザワ付いた。
美咲に他意はない、だけど後輩くんはそうじゃないみたい。
酒のせいで赤みのさしていた頬を、もっと赤くして鯉みたいに口をパクパクしてる。
鈍いって言われる俺でも分かる…、その行動。
「美咲、闇雲に言わないの」
「えー…でも、俺…あっくん好きらぁ」
ぐだぐだと俺に凭れ掛かり、ふにゃっふにゃな笑顔を浮かべる美咲。
「あの、あの…俺、失礼します!」
俺の不機嫌なオーラを感じ取ったのか、後輩くんは深く一礼して赤い顔をそのままに走り去っていった。
一度も振り返る事無く、一目散に…
そんな背中を見送って、半分寝掛けている美咲の重い身体を引きずって部屋に戻る。
相変わらず悟くんはソファで爆睡しているから、部屋へと連れて行けく…
部屋に付く頃には本当に寝てしまって、重たい身体をベッドへと転がす。
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