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「ンぁに言ってんだよ、クソ兄貴!!」
「いってー!!」
俺と美咲の間に流れる何とも言えない二人だけの空間に、割って入ってきた怒声。
同時に、背中にキツイ痛みを感じて床に倒れこんだ。
「美咲が好きなのは、俺なんだよ…アンタはおじさんに泣きついてろ!」
浴びせられる罵倒の数々は、美咲の恋人…弟の一也に他ならない。
痛みで一向に立ち上がれない俺の前にしゃがみ込んだのは、咳をした悟くん。
「災難だね、春くん」
「…うん、でも…大好きだから」
へらって笑う俺を、笑顔の悟くんが見つめてる…
アレ…でもなんか可笑しいよ、この人。
「…兄としては微笑ましい限りなんだけど、でも…いい加減にしないと…恋人として怒るよ」
声は優しくて、口元は笑ってるのに…目が、目がギラッギラして…笑って無いよ。
「…ご、ごめん…なさっ…ぐえっ」
ブルって悪寒が走って、謝った拍子にズドンっって背中に衝撃が走った。
「春ちゃん、何で凹んでるの?」
床に突っ伏す俺の背中に乗り上げたのは、事の元凶。
「おっ…」
「お?」
「お前のせいだろうが馬鹿野郎!!!」
この後、本気で禁酒命令を出したのは当たり前だよね。
お酒はね、飲んでも良いけど飲まれちゃ駄目なんだよ!
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