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「どう思う?春ちゃん…」
「俺に聞くなよ…、俺だって報告なんてして無いし」
「うそっ!?」
てっきり、春ちゃん達は父さんに報告しているもんだと思ってた。
"悟くんがしてるかもしれないけどね"何て、他人事みたいな春ちゃんに、頭がグルグルするよ。
「…父さんに、後ろめたさとか…無い?」
「……無い。俺には悟くんが全てなの」
深く息を吐いて、キッパリと言い切る春ちゃんを少し格好いいと思った。
「父さんが、俺達の結婚を楽しみにしてくれてるのは知ってる」
"だけど…"って切なげに、悲しげに、目を伏せた春ちゃんは何だか儚くて…
思わず手を伸ばして、春ちゃんを抱き締めた。
そんな悲しい顔させたかったわけじゃないの、ごめんなさい…
「…美咲、何してんの?」
「……悟兄ぃ…」
静かな部屋に響く緩い声。
俺に抱き締められても無抵抗な春ちゃんを、グイって引き寄せて"春…"って…
聞いた事無いくらい甘い、甘い声で呼んだんだ。
「ごめんな、春連れてくから」
何も言わない、俯いたままの春ちゃんを連れて部屋を出て行く悟兄ぃの背中…
"後ろめたさなんて無い"って言ってた春ちゃんだって…悩んでいないはずなのに、俺…軽率だったよね。
俺の前では泣かなかった、でも…肩は震えて…
きっと、泣くの凄く凄く我慢してたんだ…
「……俺の、馬鹿…」
呟いて、天井を見上げるようにソファに寝転んだ…
早く帰ってきて欲しい…、あの小さな身体で一生懸命抱き締めて、早く俺を慰めてよ…
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