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気分も晴れないまま、時間は無常にも過ぎていく。
春ちゃんとは何処か気まずくて、一也ともすれ違いの日々が続いてる…
寂しいなって思うとき程、構ってくれる人は居なくて…今日は家に一人きり。
「……早く、誰か帰ってきてよ…」
寂しいとウサギは死んじゃうんだからな。
暇つぶしに、適当な携帯サイトを覗いていると割り込んで着信が入った。
ピルピルピル…
ティスプレイには「父さん」の文字。
心臓がドクンって鳴って、何時もなら嬉しくて直ぐに出ちゃう着信も、コールを3回も鳴らしちゃった。
「……もしもし?」
『もしもし美咲?珍しいね、出ないかと思った』
電話越しに聞こえる明るい父さんの声。
久しぶりに聞いた父さんの声に、やっぱりホッとする自分がいる。
「ごめんね、どうしたの?」
『美咲の声が聞きたくなってね、この間は春と話したんだ』
何ヶ月も海外に行きっぱなしの父親は、嬉しそうに現地の話をしてくれる。
俺も、最近家や学校であった事を報告して…何時の間にか、緊張感なんて忘れてた。
『それでな、同僚の娘さんが結婚したんだよ…』
その言葉に、治まっていた心臓が…また、ドクンって心臓が脈打った。
国際結婚だ、花嫁姿は綺麗だった、ブーケ取り参加できなかった…
何て、感動したんだって話してくれる父さんの声は右から左へ抜けていく。
「…父さん…」
『ん?どうした…美咲』
「やっぱりさ、俺達のお嫁さん…みたい?」
『そりゃもう!悟や春も年頃だろうに…浮ついた話も無いってなぁ…」
電話越しの残念そうな声。
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