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「…あの、あのね!」
此処で言えたら、父さんは認めてくれるかな…
"駄目だ"って反対するかな…
頭の中でグルグルグルグル…
こんな短時間に頭をフル回転させた事なんて無くて、泣きそうになる。
『…ゆっくりで良いよ、どうした?』
優しい声は、悟兄ぃを思い出させる…
「…父さんは、…男の子、同士とか…どう思う?」
『………』
俺に出来る精一杯の質問。
この場で、言える勇気は俺にはやっぱり無くて…こんな遠まわしな質問しか出来ない。
沈黙が痛くて、自然と携帯を握る手に力が入る。
『……美咲…』
長い沈黙が解かれて、俺を呼ぶ父さんの声は心なし呆れている様な気がする。
察せられたかな、軽蔑されたかな…心臓が、痛いくらいドキドキしてる。
『駄目とは言わないよ、こっちには沢山いるしね』
その言葉にスっと胸が軽くなった気がした。
「じゃ…じゃあ!」
『でも、お前達がそうだって言われたら…少し考えるかな』
「…ッ…」
『やっぱり、普通の家庭を持って幸せになって欲しいからね』
頭を鈍器で殴られた感覚ってこんな感じなのかな。
頭がぐわんぐぐわんして、その後何を話したかなんて覚えてない。
通話の切れた携帯は、どうでもいい携帯サイトを表示していて…
俺は、声を出さずに泣いたんだ。
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