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結局、美咲は帰ってこなくて俺の機嫌は下降の一途。
兄ちゃんたちには連絡を入れているみたいだけど、何で俺には何にも無いわけ?
メールの返信は無いし、電話にも出ないし…俺何かしました?
「っもう!!何だってんだよ!!」
「荒れてんねぇ…かず」
「荒れもするよ!隼くん慰めて!!」
ソファで寛ぐ唯一の弟にダイブして泣き真似しながら、心の中で溜息を付いた。
本当に、俺…何かしたのかな…
そんな、気が滅入っていた俺を隼くんは買い物に誘ってくれた。
まぁ…夕飯の買出しなんですけどね、気晴らしにはなるってもんです。
隼くんと2人、大きな買い物袋をぶら下げてのんびりと歩く商店街。
「……あ…」
「…どうしましっ…あ…」
不意に隼くんが足を止めるから"どうしたの?"って視線の先を追いかければ、前方に見慣れた笑顔。
学校の同級生なのかな、小柄な女の子と手を繋いだ美咲の姿。
楽しそうに笑って、時々恥ずかしそうにはにかんで…
これは…どういう事?
「……かず…」
隼くんが心配そうに声をかけ来る。
「大丈夫です、お友達でしょ?帰りましょうよ、晩くなっちゃう」
そうだ、別に…女友達とだって手を繋いだって良いじゃないか…
手を繋ぐのは恋人の特権!って訳じゃないんだから…
そうだよ、あれはきっと同級生…仲のいい同級生に決まってる。
自分に言い聞かせるけど、頭の中はグルグルして…倒れちゃいそうだ…
躊躇う隼くんの手を強引に引っ張って…ホラ、今だって手を繋いでんじゃん。
大丈夫、大丈夫…深い意味なんて、なーんもないよ。
「大丈夫です、隼くん…今夜は帰ってきますって」
俺は、満面の笑みでそういうんだ。
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