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父さんの口癖みたいなものだった…
俺たちの晴れ姿が見たいんだって、可愛い孫が見たいんだって…の。
あの馬鹿…今更ソレを、気にし始めたんだ。
兄ちゃん達が幸せそうなの壊したくないとか、父さんの夢壊したくないとか…
面倒くさいことグルグルグルグル考えたんだ…
「…ねぇ父さん、俺恋人いんだよ」
今まで黙って会話を聞いていた隼くんも、電話越しの父さんも吃驚してる…
嬉しそうに"本当か!?"って、"どんな子だ!?"って…
自分でも急すぎると思う、美咲の気持ちだって無駄にしちゃおうとしているんだもん…
「凄く可愛い、5歳上…専門学生…」
『年上?美咲と同い年だなぁ…』
だけど、今言わないと…多分この先いえなくなると思うんだ。
美咲の事も、本当に諦めなきゃいけなくなる様な気がするんだ…
「名前…美咲っての、季羽美咲…」
『……かず?』
「…あのね、俺…美咲の事好きなの、ほんとに…大好きなんだ」
父さんは何も言わない。
携帯を持たない手で拳を握りると、隼くんが何も言わずにソレを包むように握ってくれる。
その目は"頑張れ"って言ってくれているみたいで、拳を解いて手を繋いだ。
「まだ…子供、だけど…だけど…」
言葉が続かない。
なんて言ったら、父さんは許してくれるかな…
なんて言ったら、本当に大好きなんだよって伝わるのかな…
『一也…おまっ「何やってんの…」』
漸く聞こえた父さんの声に被ったのは、泣き腫らした真っ赤な目をした美咲だった。
「美咲ちゃん!」
隼くんの声が聞こえたのかな、父さんが代われって…怒った時みたいな声で言うから…
俺は、だまって携帯を差し出した。
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