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無言で差し出された携帯を手にすれば、聞こえてきたのは案の定父さんの声。
「…この間はごめんね」
当たり障りの無い言葉から始まった会話は、父さんの質問攻めに変わった…
一也の言っていることは本当なのか?
この間の"男同士"ってのは、お前達のことなのか?
何時からだ?
何で今の今まで黙っていたんだ?
俺は何も応えない、ただ俺の中に罪悪感と言う黒いもやもやが広がっていくだけ。
『美咲!!』
珍しい父さんの怒鳴り声は、携帯電話を外まで零れて弟達にも伝わった。
心配そうに俺を見る4つの瞳。
―…オヤジの反対位で諦めつくなら初めから好きだ何てヌかさないで!!
"友達"の言葉が頭の中で木霊して、頬に触れた激励のキスを思い出したら少し胸が軽くなった。
「……全部、父さんの思っている通りだから」
一也に言わせちゃいけなかったよね、俺は恋人である前にお兄ちゃんだもん…
「弟…好きになってごめんなさい、だけど…」
俺は本当に"一也"と言う人間を狂おしいほど、愛してるんです。
言ってしまえば簡単なもので、踏ん切りもつくもんだね…
「…美咲…」
一也は瞳うるうるさせて、今にも泣きそうな顔をしながら抱きついてくる。
片腕で小さな身体をギュっと抱き締めて"ごめんね"って頭を擦り付けた。
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