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「なぁ美咲…、昨日は何で逃げたんだ?」
翌朝、運良く美咲と鉢合わせして昨日の事を聞いてみた。
「…ぁ、ごめんね?丁度俺もスタッフさんに呼ばれちゃって」
大きな瞳をきょろきょろさせて、ごめんなさいって肩を落とす姿に"そっか、ならしょうがないね"としか言えなかった。
改めて、美咲を観察すると…元から細かったけど、最近もっと細くなった気がする。
「…モデルってそんなに大変なのか?お前、また痩せてね…?」
「えっと、まだペース配分って言うか…上手く出来なくて、でも元気だよ!」
満面の笑みを浮かべる美咲。
「…なら、良いけど…」
俺は元々、モデルの仕事をする事は反対だったから…
少しでも辛そうにしたり、体調が悪化した時には無理やりでも辞めさせるつもりだった。
その事を分っているからか、美咲は仕事の相談を俺達兄弟には絶対にしなかった。
俺だけでなく、他の兄弟にも話さないのは…
誰に相談しても、必ず俺の耳に入ると思っているからかもしれない。
「じゃあ、俺行って来るね!授業中寝ちゃ駄目だよ!」
「余計なお世話だよ、バカ」
ブンブン手を振って、車に乗って出かける姿を俺は静かに見送った。
本当に…何もなければ、良いんだけど…。
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