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=春=
美咲が仕事を始めて半年くらいが経った。
美咲は日に日に痩せて来て…、寧ろやつれて来た様な気がする。
悟くんは美咲がやりたいならやれば良いって、簡単に言ったけど…
学校と仕事の両立が難しい事くらい少し考えれば分るはずだ。
平日の昼間は学校に行って、夜と休日はレッスンやら撮影やらで晩くに帰ってきて…
アイツは自分の身体がどんな状況か分っていないんだ。
「美咲…ちょっと、話があるんだけど」
久々に家族全員が揃った夕飯…
一也や隼は美咲と一緒に居る事が嬉しくてしかないようで、片時も離れようとはしない。
「……うん、なに?」
「風呂入ってからで良いから、俺の部屋に来るように…良いね?」
何を言われるか察しているのか、肩を落とす美咲。
「ちょっと春ちゃん…美咲は今日俺達と遊ぶって…」
「かず…、俺は美咲と大事な話をするの。遊ぶのは今度」
不満そうな一也を悟くんが慰めて"ほどほどにね?"何て苦笑いを浮かべてる。
元はといえば、悟くんが簡単にOKを出すから…何て愚痴は言わないで置こうと思う。
「…春ちゃん…」
控えめに扉がノックされて、躊躇いながら美咲が顔を出す。
「入っといで…」
オドオドし乍俺の前に正座して、怒られるのを覚悟してる様子で肩を竦める。
「美咲…、俺が何を言いたいか分かる?」
「……・」
「お前、痩せただろ?どの位痩せた…」
「……」
「美咲」
「……5、キロ…」
「…お前、これ以上体重落とすなって言われたの忘れた?」
担当医から、仕事をする許可はもらった…
俺が同行して話を聞いたんだから確かだ…
でも、体重の維持は絶対だ。
元々肉の付かない体質なんだから…、状態の維持は大切なんだ。
「ごめ…なさい」
謝罪の言葉と一緒にボロボロと流れる涙。
肩を震わせて、嗚咽混じりに無く美咲にため息しか出なかった。
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