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=美咲=
学校は好き。
服が好きで、自分でも作れたらなって…デザイン系の学校に入った。
友達もそれなりに居て、たまに雑誌に出るとは自分の事みたいに喜んでくれる。
皆が、頑張れって言ってくれるから…
ちょっと位辛くても頑張ろうって思うんだ。
でも、気持ちは頑張ろうと思うのに、楽屋に向かう足はどんどん重くなる。
「おはよう、ございます」
重い扉を開ければ冷たい視線が突き刺さる。
何時もの様に部屋の隅で小さくなって、大丈夫…大丈夫…って唱えるの。
「MISAKIさーん、お願いします」
メイクも終わって、スタッフさんに呼ばれると荷物は置いてスタジオへ。
嫌な予感がしたけど、一人の撮影の日は心がとっても楽なんだ。
今日のカメラさん、沢山笑わせてくれるし照明ガンガンじゃないし…楽しい。
先輩達がね、スタジオ入りしたのを見計らって俺が楽屋に帰るの。
「お疲れ…さまでした!!」
って、頭下げて…もう会わないように…
急ぎ足で楽屋に戻ると、視界に入った光景に空いた口が塞がらなかった。
「…………何、これ…」
楽屋の一角に散らばる俺の私物。
「あ…ぁ、…あああ!!」
床に落ちた腕時計。
細かく割れたガラス、文字盤は歪んで針は動いていなかった…
大事な…大事な時計だったのに…
―――…一応、社会人なんだから…
視界が滲む…、泣いちゃいけない。
絶対泣かない…
―――…俺からのプレゼントだ、頑張れよ…美咲!
春ちゃん…
心臓が痛い…、ドクドク行ってるのが分かる。
ヒューヒュー喉が鳴って呼吸がうまくいかない…
苦しい…苦しい、…春ちゃん…しゅ…ちゃ…
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