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=美咲=
時計の事は、まだ…立ち直れない…
一也が求めてくれたのに、お腹の痣を見られるのが嫌で拒んでしまった。
悲しくて、悲しくて、やっぱり泣いてしまいそうになるけど…
一也は頑張れって言ってくれた、今朝は兄ちゃんがご飯作ってくれた…
今日は、雑誌1冊だから…きっと直に終わるはず。
「おはよう、ございますっ!」
元気に挨拶すれば、見慣れたスタッフさんが笑ってくれた。
綺麗な服に着替えて、真っ白なセットの上に立つ。
照明とレフ板の反射が眩しい…
水分をしっかりとって、一度大きく深呼吸…
気を取り直して、カメラに視線を向ければ、カメラさんの背後に先輩たちの姿が見えた。
…心臓がドクドク大きく鳴り始めて、お腹の痣がジクジクと痛んだ。
「はっ…ふ、…」
俺を見てクスクス笑う姿から目が離せない…
立てた親指が、首を横切って下に落ちる…。
―――… 。
音にならない、言葉…
口の動きが俺にそう伝えていた。
「ひっ…っ、…」
自分に何ども、大丈夫だって言い聞かせるのに身体はどんどん重くなる。
頭の中がガンガンして、目の前が真っ黒になっていく。
「MISAKI…!!」
カメラマンさんの叫び声が俺の聞いた最後の声。
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