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=美咲=
ふわふわとした意識の中で、俺を呼ぶ声がした。
何処から聞こえるのかは分からなかったけど…
みさき…みさき…、って何度も何度も。
その声が凄く悲しそうで、泣きそうに聞こえたから…
慰めてあげないと…って、目を開いたの。
「っ…み、ざきぃ…!」
ぼやけた視界に一番に飛び込んできたのは涙でグズグズになった、何とも不細工な顔をした春ちゃんだった。
「……ふふ…ど、したの?…その、顔」
力の入らない手を必死に伸ばして、春ちゃんの涙で濡れた頬っぺたに触れてみた…
泣いたせいかな…、春ちゃんの頬っぺたはともて熱かった。
「この馬鹿っ!何のんきな事言ってんだよ…」
俺の手に春ちゃんの手が重なって、頬っぺたとは反対に冷たい手が気持ちいい。
ポロポロ涙を流す春ちゃんは、泣きながら俺が倒れたのだと教えてくれた。
不思議と涙は流れなくて、ただ全部知られてしまったのだという事が悲しかった。
「…そか…」
「何で、一言いわねぇんだよ…」
俺の手を握る、冷たい春ちゃんの大きな手。
泣きはらした赤い目が俺を真直ぐに見つめていて、俺はどうしても逸らす事が出来なくて…
「…ごめんね…」
ニコって笑って、何でも無いんだよって謝ったのに春ちゃんの顔は険しいまま…
「謝って欲しいんじゃない!」
寝ている俺の肩をベッドに押し付けて、苦しそうに顔を歪める春ちゃんが少しだけ痛々しく思えた。
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