🍀あと一歩 春編

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年が明けて、正月の騒がしさが落ち着いた頃。 弟達が、俺に内緒で何やらソワソワし始めたんだ。 俺もそうだから分かるんだけど、皆で俺の誕生日を祝おうとしてくれているみたい。 1月25日。 あと一週間で、俺の10代は終わり20代…大人の仲間入りをする。 「ねぇ春ちゃん、何が欲しい?」 美咲は素直だから、誰の誕生日でも直ぐに欲しいものを聞いてしまう。 だから、何時も双子に怒られちゃうんだよね。 サプライズを企画しても、直ぐに喋っちゃうからさ…。 「春くん、今年も期待しててね?」 逆に、隼は色男だから…毎年何かしらサプライズをしてくれる。 男の俺でも、キュンって来る演出をしてくれるから実は毎年楽しみなのだ。 「…もうさ、音楽ギフトとかで良い?」 一也は一番現実的で、日用品…様は当たり障りの無いものをくれるんだ。 決して手を抜いているわけじゃなくて、その時その人が必要だと思う物を選んでくれているだけ…。 現に、俺は今…商品券が欲しいです…金欠なので…。 毎年、弟達は色々考えて誕生日を祝ってくれるから…嬉しくて、嬉しくて、毎年泣きそうになるんだよね。 「……」 でも、悟くんだけは分からない。 毎年祝ってくれるけど、何時もバラバラで… ある年は、自作の絵をくれた。 ある年は、温泉旅行に連れて行ってくれた。 ある年は、やっぱり自作のしおりをくれたっけ… そして去年の誕生日。 俺にとって、忘れがたい年となった誕生日には… "おめでと"…の一言と、優しいキスをくれたっけ…。 あれから一年。 今年は、俺の欲しい物をくれるだろうか…。 欲張ったりしないから…少しだけ。 貴方に気持ちを伝えて丸一年、キスだけじゃ…ちょっと足りない。 _
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