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「うぅ…」
「あぁあ、折角のイケメンが台無しだな」
「うっさい!」
「んだよ、元気じゃん」
くしゃくしゃっ頭を撫でられて、変わらない楽しい雰囲気に胸が少し軽くなった。
俺は、恋人が最近ツレなくて誕生日も一緒に居てくれないかも知れないのだと話した。
恋人が"実の兄"だとは、幾ら幼馴染相手でも言うわけにはいかない。
竜ちゃんは、悟くんの事だって普通に知っているんだから…
話し終えてからの沈黙は嫌な予感しかしない。
「竜ちゃ…」
「なぁ、春…飽きられてンじゃ無いの?」
「ぇ…」
竜ちゃんの言葉が素直に受け入れられなくて思わず聞こえないふり。
「だから、…恋人同士で誕生日ッたら一大イベントだろ…」
"まして付き合って初めての誕生日ならなおさらだよ"って、困ったような顔をした竜ちゃんを前に、俺は頭の中がカッとなって、一目散にその場から逃げ出した。
呼び止める声も全部無視して、逸早く一人になりたかった。
"付き合って初めての誕生日"
普通の恋人同士なら、凄く特別な記念日だよね。
だけど、俺は…過去に19回も祝ってもらってて…ふわふわした悟くんには、違い何て有る訳無いんだ。
俺がかってに夢を見て、俺がかってに望んだんだ。
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