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「っー…春、うっせぇー」
俺が起きた事で捲くり上がった布団の中に、身体を丸めて頭を抱える悟くんがいた。
「ご、ごめんなさい…」
「…良いよ、俺の方こそ、ごめん」
咄嗟に謝る俺に首を振る悟くんは、再び俺謝罪の言葉を口にした。
どうして謝るのかと、問いかけようと口を開いた瞬間、俺の視界は真っ暗になって、とても幸せな温もりに包まれた。
「さ、……悟、くん?」
「良いから…このまま聞けって、絶対顔見るなよ」
そう、俺は悟くんに抱きしめられていた。
キツク、キツク…まるで、逃がさないって…言っているみたいに…
だから俺も…逃がさないように、悟くんを抱きしめた。
「…俺さお前の事…弟としてしか…見てなかった…」
……あぁ、やっぱり…。
思っていた事を、直接悟くんの口から聞いて…絶望が胸を一杯にした。
これから、悟くんは俺を避けるのだろうか。
もしかしたら、一人暮らしを始めてしまうかもしれない…
だったら…最後くらい、物分りのいい弟で居たい…
だから、俺は必死に涙を堪えて小さく頷いた…。
「でも…」
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、悟くんは言葉を続けた…
「……今更だって、怒るかもしれないけど…」
俺を抱きしめる悟くんの腕から、微かに震えが伝わる…
大きな深呼吸…緊張…してるのかな…
なんて、俺は何処か他人事のような感覚だった。
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