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沙羅と居ると楽しい。楽しいから好きだ。好きだから恋なのだ。
きっと僕の心はそんな単純な道を辿ったのだと思う。学校でお喋りをして、家に帰ってからも外で遊んだり、どちらかの家で一緒に宿題をやったり、とにかく彼女は僕の生活には欠かせない人物になっていた。
それからやがて大きくなり中学生になった頃、別にどちらかが告白したわけではないけれど、僕達二人は自然に手を繋ぎ、自然と同じ道を歩んでいた。恵まれた事に、邪魔をする者は存在せずに、何もかもが上手くいっていたのだ。
高校も一緒のところに行こうと彼女が僕に合わせてくれて、同じ高校に行き、同じ高校生活を送る事となった。勉強に部活に恋に……有り触れた人生ではあるけれど、それがとても幸福で掛け替えのないモノだという事は十分に理解していたし、それが壊れてしまった時にやって来る恐怖も分かっていたつもりだ。
本当なんだ。
分かっていたはずなのに……
いざその状況の中に放り込まれるとこんなにも苦しくて切なくなるモノだったのかと、自分の甘さを思い知らされた。
そうさ、忘れもしないあの日。
平凡で幸せな毎日を過ごし、やがて高校三年生になり進路で悩みはじめる頃。あの暑い夏の日。蝉が死に物狂いに鳴き、太陽が地面を焦がそうと頑張っている夏休み前。
君を襲った悲劇。
そして、その日から腐らずの君と過ごした日々。僕の中で何が変わり、そして僕は何を変える事ができたのだろうか?
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