#2_蝉が死んでいる

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いつもと同じ朝食をいつもと同じペースで食べていると、自宅のチャイムが鳴った。 「沙羅ちゃんじゃない?」 母がそう言って玄関の方を見る。まぁほぼ間違いなく沙羅だろう。 僕は朝食を食べる手を止めて玄関へと向かい、扉を開けた。すると、制服姿の沙羅が門の外から手を振っていた。 「大ちゃん学校行こう!」 と言われても、まだパジャマ姿だから無理である。朝食もまだ食べていない。 「ごめん、まだ着替えてないんだ。朝飯も途中だし、とりあえず上がってよ」 そう現状を説明すると、沙羅は慣れた足取りで家の中へと入り、母に挨拶をした。母も笑顔でそれを返す。 それを横目で見ながら僕は朝食を急いで平らげ、沙羅に言った。 「んじゃ、ちょっと着替えてくるから、テレビでも見ててよ」 沙羅は僕の言葉に笑顔で返す。 「はーい。いってらっしゃい」 僕は無言で手を振って返事をし、部屋へと向かい急いで制服に着替えてから鞄を持って沙羅の元へと戻った。 「おまたせ」 「それじゃあ行こっか」 ソファーに座りテレビを見ていた沙羅は、立ち上がり鞄を持って母に言う。 「お邪魔しました」 母は洗い物をしながら声だけを返す。 「いってらっしゃい。気を付けて行くのよ」 僕は沙羅の後ろに付いて歩き、家を出た。暑い陽射しが容赦なく僕達を責める。 暑いな…… もうすぐ夏休みか……
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