#2_蝉が死んでいる

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「夏休み、どこか行く予定あるの?」 駅に向かう途中、沙羅がそう尋ねてきたので僕は少し考えてから言った。 「特に無いかなぁ……」 「ふ~ん……じゃあ私が予定考えてあげようか?」 「え?いいよ別に」 わざわざ予定を組んでもらう程の事でもないので沙羅にそう言うと、彼女は少し寂しそうな顔をして言った。 「でもさ、高校最後の夏休みだよ。大学はたぶん別々になっちゃうだろうし、私は大ちゃんと色んな想い出を作りたいんだ」 想い出か…… 違う大学に行けば、もうこうやって一緒に登校する事も無いんだよな。今まで気付かなかったけれど、そう考えると何だか寂しい気がする。 「じゃあ、予定頼んだ」 そう言うと沙羅は僕の方を見て 「うん、まかせといて」 と優しく微笑んでくれた。 それから僕達は体に刻まれた記憶のおかげで、意識する事なく改札を抜け、電車が来るのを待ち、昨日と同じ車両へと乗り込み学校近くの駅まで揺られた。その何でもない行動もいずれは必要無くなり、共に歩んでいたはずの道も、いつの日か分かれ道に差し掛かる時が来るのだろう。 だけど不思議な事に、彼女とは終わらないモノがあるのだとこの時は確信していた。大学が別になろうとも、いつでも沙羅と会える。二人を繋ぐ鎖は硬くて腐食する事はないと思っていたのだ。
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