春の章

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素顔を晒し目立つ風貌をしていたにも関わらずいくら調べても素性の全くわからぬあの愚者は、なんとお嬢様が13歳のお誕生日を迎えた月の終わりにお屋敷を襲撃したのです。 その時私はお嬢様のお傍についていたのですが、襲撃に気づいた時にはお嬢様の御身を守護するため微力ながらも侵入者を足止めせんとしました。 しかしその時は私も子供。プロの護衛として日々鍛練したわけでもないただのメイド見習いが、お屋敷の守衛を突破できるほどの力を持った者に勝てるわけがありませんでした。 一撃のうちに壁にたたきつけられ、それでもお嬢様をお守りしようと床を這いずる私をあのナルシストはせせら笑い、仲間によって押さえ付けられ顔を上げさせられた私の眼前でお嬢様に呪いをかけたのです。 凶々しい光がお嬢様の中に吸い込まれ呪いが発動したのを見届けるしかなかった私は、そのまま意識を刈り取られ奴らを逃がしてしまったのです。 もう少しあの時私に力があれば、もう少しあのナルシスト達を食い止めることができたならあの直後に駆け付けられた旦那様が侵入者を捕まえてお嬢様の呪いを解かすことができていたのです。
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