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「壁、結構砕けちゃったね。直すからそこから手を離して? 」
「いえいえいえ、シュシュの御手を煩わせることなどできません。自分の不始末ですから自分で修繕します」
「いいの。アミィはいつも私の暴走の後始末をしてくれてるでしょ? さっきだって止めてくれたし、いつも迷惑ばかりかけてるからこれくらいさせてもらえないかな?」
「迷惑だなどと……私はメイドとして当然のことをしたまででごさいます」
「もう。学校ではアミィはアルマートン家のメイドじゃなくて、アミーリア・シェリアスターとして学生生活を送ってって言ってるでしょ。だからそんな義務感を持たなくてもいいの。だからほら、手を退けて? 」
お嬢様はこうと言えば決して退くことのない真っすぐなお人柄ですので、私は壁から離れ、お嬢様の御好意に甘えることにいたしました。
平均より高めの身長の私が砕いた壁は、私の胸辺りから放射状にひびや亀裂が走っております。
その中心に手の平を翳し、修繕のための魔法を唱えるお嬢様。
爪先立ちで背伸びしなければ私の拳が空けた穴の奥まで覗くことのできないなんて、日常生活を送るにも多大な障害をあのナルシストは作って行ったのです。
ああなんておいたわしいのでしょう。
本当に、あの事件のことを思い返す度にお嬢様をお守りすることができず不樣に転がることしかできなかった自分が情けなくてしかたありません。
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