春の章

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事件後、いくら調べてもお嬢様に何の呪いがかけられたかわからずさらに何の兆候も無かったために経過観察となっていましたが、何ヶ月経っても何年経っても一向にお嬢様の身長は伸びることはありませんでした。 そのことでやっと、ナルシストがお嬢様にかけた呪いが《夢島の時》なのだとと判明しました。 それは数十年前に禁術となったものであり、その呪はかなり高度なもので解呪方法が術者が術を解除するか術者が死ぬ、その二通りしかない効力が絶大な魔法なのです。 被呪者は呪をかけられたその時から身体が時を刻むのを止め、成長しなくなります。 この呪は永遠の美貌を求めた一昔前の美姫によって創造された物であり一時期魔力を一般より多く持つ若い娘達の間で流行しました。 しかし、とある美しい高貴なご令嬢が興味本位で魔力量も不足しているのに術を行使し、その結果魔法が暴走してしまいました。 運の悪いことに魔法の影響下にあった王族の公子が、心身ともに成長せずさらに術の解除も不可となってしまい、令嬢の一族は死罪となり、さらにその魔法も同時に禁止とされたのです。 今はもう詳細が記載された文献などは残っているはずがないその術を、あのナルシストは悪用したのです。 おそらく彼らは、成人すれば傾国並となるであろうお嬢様の美貌と将来性を嫉んだ何処かの令嬢が差し向けた刺客だったのでしょう。 唯一の救いはお嬢様が身体が子供のままでも第二次性徴を無事に迎えることができたことでしょうか。
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