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しかしナルシストのせいとはいえ、真のメイドとはいかなる時も動揺しないもの。まだまだ私はメイドとして未熟なのですね……精進しなければいけません。
本当に今でもあの時のことを思い還すと膓が煮えたぎってしかたありません。
早いうちに見つけだして、少なくとも婚期半ばまでにはあのナルシストを処理しなければなりません。
「いやっ、い、良いんだよ。私のせいでアミィが悩まないといけなくなったんだから。ごめんね、余計な心労をかけちゃって」
あの人達のことでしょ?と眉を下げて困ったような、悲しむようなお顔をなさるお嬢様。
ああ、気遣うべきお嬢様に逆に気遣われてしまうとは……。私、メイド失格にございます。
「シュシュ……。ううっ、メイドであるこの私が不甲斐ないばかりに……それは、あのナルシストを一矢報いずして逃してしまった私の責にございます。身をていしてでも呪いからお嬢様をお守りするべきでした」
「ううん、アミィに責任なんてないよ。私が油断していたのがいけないの。だからほら、泣くのを止めて、ね?」
おいおいと情けなく涙を流す私めに白いハンカチを差し出し輝かしい笑顔とお優しい声をかけて下さるお嬢様……。
10歳の私はこの笑顔を守る為に身を捧げたのです。その誓いは今も違える気は全くございません。
ええ、たとえ天変地異が起ころうが空が血の色に染まろうが天地がひっくり返ろううが世界が終焉を迎えよが、私はお嬢様に最期の時までお仕えするのです。
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