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 目の前の男に、ヒロは眩しいほど若さに満ち溢れいるねと頭の片隅で感想を言った。 自分も数年前に着ていたような黒の学生服に身を包んだ青年は、どこをとっても礼儀正しい青年なのだろう。 それに比べてヒロは平日だというのに昼からドラマの再放送を眺める、くたびれた主婦の劣化バージョンといえる。 しかし今は正午を過ぎたばかりの時間ということを思いだし、目の前の青年も案外真面目なだけではないのかもしれないと思った。 この一連の思考は彼にとってただの現実逃避である。 「…あれ、ちょっとどこ行くのかな」 ぼんやりと思考していたヒロの隣を当然のように通りすぎ、青年はきちんと玄関に革靴を揃えてヒロの家へと侵入した。 未だこの訪問者を理解できていないヒロはその行動にただ戸惑うだけだ。 青年は別段礼儀正しいともいえないらしい。寧ろ今の彼はかなり不躾だ。
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