chapter 1

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「………………っ」  目の前をゴブリンたちが通って行く。しかし誰も気付かない。先頭の一匹は俺の右手を踏んだというのにも関わらず、柔らかい土でも踏んだと思っているのか地面(おれ)を見る事はない。  馬鹿なゴブリン三頭は俺に気付く事なく背を見せる。絶好の機会だ。今なら確実にゴブリンを殺す事が出来る。…………しかし、それは一匹だけだ。それでは駄目だ。ゴブリン二頭を相手にして勝てるなんて思ってはいない。  息を殺す。今ここに俺は居ない。気配は揺らがず、あるのは地面だけ。  魔法も、武器を扱う器用さも持たない俺がこうして傭兵を続けられているのは、ひとえにこの特技があるおかげだ。野山で獲物を狩る際、気配なんかさせていたら何も捕まえられない。だから自然と気配を殺す術を身に付けた。 「ギ…………ギギ」  ゴブリンのうちの一匹が何かを呟くと、それに合わせて残りの二匹が散会した。恐らく、手分けして別々の場所から餌を見繕うのだろう。…………俺は三匹がバラバラになり、一匹だけになるこの瞬間を待っていたッ!! 「I am work one's magic,《我は魔法を使う》It is a magic of set《それは不変の魔法》…………create a work of sword!!《…………剣を創造する!!》」
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