chapter 1

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 腕が痺れる。農業や狩りのおかげで多少力はあるが、それでも普段から山を駆けずり回るゴブリンには到底及ばない。 「クソッ!!」  先程とは反対の方向から錆び付いた剣の刃が迫る。ゴブリンは俺の半分以下の背丈であるため攻撃範囲が狭い。そのため何とか、背後に跳ぶ事で回避に成功する。  思わず舌打ちしたくなるのを堪えて、俺は再び剣を創造した。しかし少ない魔力と、甘い詠唱で作られた剣は酷く脆い。ゴブリンの筋力に任せて叩き付けるように放たれる一撃を、たった一度受け止めただけで呆気なく霧散する。 「…………クソ、クソ、クソォッ!!」 ――――何故、何故こいつらはここに居る!? 散会したはずだ。こうなる事を恐れて慎重に行動したと言うのにッ! 「嗚呼ああああああッ!! I am work one's magic,《我は魔法を使う》It is a magic of set《それは不変の魔法》…………create a work of sword!!《…………剣を創造する!!》」  詠唱しながら全力で剣を振るう。無論斬り付けたこちらの剣が折れてしまうが、しかし振り切った右手に代わり、左の手に剣を創造した。そして右手の勢いが死なないうちに左手に持った剣をゴブリンの頭に突き刺す。――――一匹、息の根を止めた。敵は残り、たったの一匹だ。 「ガギ…………ギガガ!!」  何を言っているか分からないが、多分怒っているのだろう。だが怒りたいのはこちらも一緒だ。ゴブリン程度に殺されてやるわけにはいかない。
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