chapter 1

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 1 「…………ん?」  どうやら俺は寝ていたらしい。睡眠後のスッキリ感がないという事は余程酷い悪夢でも見たのか。まぁ、別段どうでもいいが。  身体が強ばっていたので軽く伸びをすると、カンカンカンと授業終了の鐘が鳴らされた。それを聞いて生徒たちは羽ペンとインクと羊皮紙、分厚い魔法書を片付ける。俺もそれに倣い片付けをすると、今まであっていた授業――魔法論理――の先生が俺を睨んでいた。  魔法論理の先生は若いし、俺みたいな不良生徒を良く思っていないのだろう。いや、魔法学校の先生になれるという事はかなり優秀な人間であるはずなので、単純に不良生徒の事が理解出来ないんだろう。……大丈夫、俺も先生の授業は理解出来ていないから。  魔法は魔力が大事ですが、それ以上に想像力が重要です! とか教える割には魔法論理でご託を並べやがる。農民である俺が貴族様のご高説を理解出来るわけがない。  ってなわけで、こちらを睨め付ける先生にひらひらと軽く手を振り、逆の出口(まど)から教室を出る。 「る、ルカ君待って…………」  名前を呼ばれて振り返ると、小さくておどおどしている女みたいなやつが居た。名前はフィン。俺のクラスメイトでありルームメイトでもある。  真っ青なさらさらで細い髪に、変声期を迎えていないかのような高い声。しかも小さくていつも他人の顔を窺う大人しいやつなので、いじめの対象にされていた。
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