chapter 1

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 過去形なのは俺が助けたからだ。それから妙になつき、四六時中俺に着いて来るようになった。因みにフィンとは偽名で、本名はフィーネ。立派な女の子である。性別を偽って入学するのは別に珍しい事ではない。多分。 「どうかしたか?」 「どうかした? じゃないよっ。ちゃんと授業受けなきゃ」  …………フィーは貧乏貴族の長女であり、通常は男しか跡取りになれないため性別を偽ってる。だから俺のような教養の無い農民とは違って真面目だ。助けてやってからはズボラな俺の世話をやってくれるため重宝していたが、母親のような小言を言うようになったのは困る。  だがまぁ、妹がもう一人増えたと思ってこの現状を享受している。因みに俺の家は父さんと母さんと俺と妹の四人家族で、本来なら俺はこんな所で勉強などせずに田畑を耕す青春を謳歌している。  この魔法学院は魔力を持つ人間が強制的に入学させられるため、仕方なく通っているのだが、本来魔力とは血の濃い貴族や王族にしか宿らないため俺のような農民は殆どこの学院に居ない。一応生徒に身分の差は存在しないが、そんな物は書類上でしかない。  だからフィーのような存在は俺にとって心のオアシスである。故郷の幼馴染みには少し申し訳ないが。 「うん、まぁアレだよ。頑張ったよ少しは。夢の中で」  適当に言い訳を羅列しつつその場をあとにする。俺は貴族様方と違って金銭的な余裕はないため、学費は無償であるものの有償である寮のお金を貯めねばならない。しかも、本来なら俺が手伝っているであろう畑仕事は学校の所為で出来ないため、少しでも足しになればと実家に仕送りをしている。
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