chapter 1

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 その瞬間漂う酒気。中に入る前から僅かに感じられた酒のにおいは、まるで口に入れてなくとも味がする程濃厚だ。しかも依頼を達成して気分が上がっている傭兵たちが酒を飲んでいるため、中は五月蝿くて仕方がない。  俺はそんなギルドに辟易としつつも受付に向かう。  受付はどこも女性で、しかも皆美しく綺麗な女性ばかりだ。過去に傭兵として成功した人間がギルドの受付嬢と恋に落ちたという話もあり、そんな下心満載で依頼をこなしていく人間は少なくない。無理矢理手を出せば周りの連中や、傭兵ギルドと直接契約を結んでいる化物みたいなやつらに殺されるため、荒くれが多い傭兵たちだが受付嬢には紳士的に対応している。基本的に傭兵とは、腕っぷし自慢の馬鹿の集まりだ。 「すみません。等級十の討伐依頼、何かありませんか?」  ギルドでは難易度の目安として等級制度を取り入れている。等級制度では等級十が最低、等級一が最高となっている。  俺が受けるのは大抵が等級十の依頼だが、そもそも依頼は余程簡単な物以外数名で集まって受けるのが一般的であるため、難易度的には等級八くらいはある。それでも八なのが俺である。 「現在、等級十で受注可能なのはこちらになっております」  そう言って受付嬢が提示した依頼は『ゴブリン三頭の討伐』だった。  どうやらゴブリンが家の庭を荒らすので困っているらしい。森や山での討伐依頼でないという事は、一体一体誘い出して各個撃破するのが難しい事を意味している。
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