そのよん。

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エレベーターに乗り込んで 慌てて口の端を袖で拭う。 誤解されないように 言っとくけど、 別に会長の言葉が 図星だったから 逃げ出した訳じゃない。 あの餓鬼を妬むとか、 あり得ないでしょー? …え?じゃぁなんで 逃げたのか、って……? それは、ほらぁ… 殴られた時に 口の中切れちゃったみたいで 血が、床に垂れたんだもん。 俺、血が世界で1番 嫌いなんだよね。 嫌いなだけなら まだいいんだけど、 俺の場合、見ただけで 過呼吸おこしたり 気絶しちゃったりするから… 喧嘩できないのも そのせいだよー…… 今回は、そんなに 出血してないけど 血の味と臭いが酷いから…… きついな… 「はぁ……はッ…」 必死に呼吸を調える。 血は、嫌いだ。 あの日のことを 思い出すから… 流れる汗を拭うこともせず、 俺はその場に座り込んだ。 力が入らない。 息が、苦しい。 いっそのこと、 もう、このまんま 消えてしまえたら楽なのに なんて… 「……美田園?」
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