そのろく。

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その瞬間、 堰を切ったように 溢れ出す気持ち。 今まで、誰にも言えずに 抑え込んでいた思いが 爆発した。 「…俺、いっぱい 我慢したっ」 ―ひとりで家にいるのは 寂しかった。 ―もっともっと、 母に甘えてみたかった。 「ちゃんと、 言いつけも守ったし、 わがまま言わなかった!」 ―いつ帰ってくるか 分からない母を待つのは 辛かった。 「いじめられても 泣かなかったッ!」 ―泣いて、母に すがりたかったけど 耐えてみせた。 「……っ」 沢山、沢山、 我慢した。 「…ッでも、ほんとは…… ほんとはっ! 寂しかったし 苦しくてっ 逃げたかった! 辛いし、怖いしっ 痛くて…ッ 誰か助けて、って!」 …そんな時に 追い討ちをかけるように 母が死んで、 幼かった俺の心は 限界だった。
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