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ある少年の家はそれなりに裕福な武家であったが、家族が嫌いであった
理由は特にないが、強いて言うなら姉のせいだ
「鬱陶しい、はやくあたくしの前から消えて」
少年の姉は美人で優しいとの近所では評判であったが少年の前では違う
少年は美人よりも愛らしい容姿をしていた。そして頭が良く、武にも才能があった
男だから後々家を継ぐのだからそれは当たり前なのだ。しかし、如何せん姉はそれが気に入らなかったのである
「ごめんください、誰かいませんか?」
この出会いこそが少年の運命を変えた
**************
「おコウ」
「ですからそれで呼ぶのやめてくださいよ」
妖しい色気のある美男子の持つ猪口に酒を注ぎながら少女のように愛らしい容姿をした少年が頬を膨らませた
「なんでだい?可愛い愛称じゃないか」
「俺は男ですよ。女の呼び方されて嬉しくないです」
「我が侭だね」
「どっちがですか!」
少年 楠 小十郎はついにへそを曲げてしまったのに男 長州藩士 桂 小五郎はクスクスと笑う
「僕だね。しかし可愛い小十郎も悪いよ」
「先生、ついにそっちに目覚めましたか…」
「まさか。小十郎だから可愛いと思うんだよ」
肌理の細かい雪のような白い肌、パッチリとした大きな黒の目に縁取る豊かで長い睫毛
小振りな鼻、毒々しいとまでいかない柔らかそうな赤い唇、華奢な体躯の小十郎はそん所そこらの女より女らしかった
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