序章

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「ハッキリ言う女なんだから、嫌いなら嫌いって言うんじゃない?」 「そう、やんな。元気でたわおおきにコウ。ほなね」 手を振り闇夜に消えた佐々木を見送り、楠は桂たちがいる部屋に戻らず自室へと入る (桂先生、アンタは裏切らないよな……?) この名をもらった時から、楠は生涯、桂に仕えることを誓った 桂が命じるなら人を殺すのだって罪悪感は微塵にも感じない しかし、かすり傷一つでもついていたら桂は目を吊り上げて楠を叱るのだ (先生は信じてますからね) 寝着に着替え布団を敷き、行灯の明かりを消して楠は眠りへとついたその頃、桂と吉田はまだ部屋にいた 「小十郎が来て三年、か。早いねぇ」 「あぁ実に早いものだ」 手酌で酒を飲み桂は戸窓から月に厚い雲が掛かった空を見上げる。皐月半ばでそろそろ梅雨の時期だ 「なぁ。本当に行かすのかよ」 「本気だ。僕が嘘をつくとでも思っているのかい栄太郎」 「今は稔麿だっつの。高杉さんがいたら即答で却下だろうな。まだ十七の子供だぜ?」
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