13人が本棚に入れています
本棚に追加
吉田の言葉に桂は手酌をしていた手を止める
「十七………」
「小十郎は強い方だが、まだまだだ。壬生狼にいれば死ぬこともある」
それは間者と知られた時を含めて言っているのだと桂は分かった
「……なら、悔いのない死に方をしてほしいね。どっちにしろ、もう決まったことは覆せれない」
「………そうだな。俺は寝るじゃあな」
吉田は部屋を出て行き、桂一人が残る
「十七、か……あの日から三年も経つのだな」
戸窓に近寄り桂は目を閉じて浮かんだのは、数体の肢体の中にボウッと突っ立ている楠
『人生ってなんなんだろうな』
そう言い血がついた刀を持って桂に近寄る
『なぁ殺してくれよ。親殺しは大罪だろ?こんな腐った世界に生きたくねぇんだ』
桂を見上げ刀を握らせると虚ろな目を閉じ死へ向かおうとする楠
『死ぬなら僕の駒になるかい?おいで。僕は君を裏切らないよ』
あの時の彼の手はとても温かった
最初のコメントを投稿しよう!