序章

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吉田の言葉に桂は手酌をしていた手を止める 「十七………」 「小十郎は強い方だが、まだまだだ。壬生狼にいれば死ぬこともある」 それは間者と知られた時を含めて言っているのだと桂は分かった 「……なら、悔いのない死に方をしてほしいね。どっちにしろ、もう決まったことは覆せれない」 「………そうだな。俺は寝るじゃあな」 吉田は部屋を出て行き、桂一人が残る 「十七、か……あの日から三年も経つのだな」 戸窓に近寄り桂は目を閉じて浮かんだのは、数体の肢体の中にボウッと突っ立ている楠 『人生ってなんなんだろうな』 そう言い血がついた刀を持って桂に近寄る 『なぁ殺してくれよ。親殺しは大罪だろ?こんな腐った世界に生きたくねぇんだ』 桂を見上げ刀を握らせると虚ろな目を閉じ死へ向かおうとする楠 『死ぬなら僕の駒になるかい?おいで。僕は君を裏切らないよ』 あの時の彼の手はとても温かった
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