第1章

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「離せっ!」 激しくあえぎながらも、美緒都はきつい眼差しで男を睨みつけた。 冷ややかな微笑をふっと唇に刻み、男は美緒都の左腕をとらえたまま、片手を一閃させた。 「っ!」 はだけた胸に鋭い痛みが走り、美緒都は愕然と目を瞠った。 なめらかな白い胸に、一条の血が流れ落ちる。 鋭く尖った長い爪で、男が美緒都の胸を切り裂いたのだ。 男の爪は20センチほどもあり、鋼の硬さを備えていた。 この時になって初めて美緒都は、男が人外の存在であることを知った。 それでも……揺るぎない反抗心をこめて、美緒都は男を睨みつけた。 「離せっ!俺に触るなっ!」 男の手をふりほどこうともがいた時、再び胸に鋭痛が走った。 「あっ……!」 白い喉をのけぞらせて、美緒都はあえいだ。 今度の傷はかなり深く、息をするたびに傷口が鳴るように疼いた。 「……くっ……離せっ……!」 激痛にあえぎながら、美緒都はなおももがいた。 その途端。 男がさらに深く、美緒都の胸を切り裂いた。 「あうっ!」 美緒都は、きつく眉を寄せて身悶えた。 白い胸に走る傷痕から鮮血が流れ、たちまちシャツを真っ赤に染めた。 「……あっ……うっ……!」 悶え苦しむ美緒都の顔を吐息が触れあうほどの近さから覗きこみ、男は嗜虐に酔った表情でささやいた。 「わからないのか、美緒都。抵抗すれば、それだけ痛い思いをすることになる」
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