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「離せっ!」
激しくあえぎながらも、美緒都はきつい眼差しで男を睨みつけた。
冷ややかな微笑をふっと唇に刻み、男は美緒都の左腕をとらえたまま、片手を一閃させた。
「っ!」
はだけた胸に鋭い痛みが走り、美緒都は愕然と目を瞠った。
なめらかな白い胸に、一条の血が流れ落ちる。
鋭く尖った長い爪で、男が美緒都の胸を切り裂いたのだ。
男の爪は20センチほどもあり、鋼の硬さを備えていた。
この時になって初めて美緒都は、男が人外の存在であることを知った。
それでも……揺るぎない反抗心をこめて、美緒都は男を睨みつけた。
「離せっ!俺に触るなっ!」
男の手をふりほどこうともがいた時、再び胸に鋭痛が走った。
「あっ……!」
白い喉をのけぞらせて、美緒都はあえいだ。
今度の傷はかなり深く、息をするたびに傷口が鳴るように疼いた。
「……くっ……離せっ……!」
激痛にあえぎながら、美緒都はなおももがいた。
その途端。
男がさらに深く、美緒都の胸を切り裂いた。
「あうっ!」
美緒都は、きつく眉を寄せて身悶えた。
白い胸に走る傷痕から鮮血が流れ、たちまちシャツを真っ赤に染めた。
「……あっ……うっ……!」
悶え苦しむ美緒都の顔を吐息が触れあうほどの近さから覗きこみ、男は嗜虐に酔った表情でささやいた。
「わからないのか、美緒都。抵抗すれば、それだけ痛い思いをすることになる」
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