第1章

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それが何なのか、すぐには美緒都にはわからなかった。 男の手には、緑色の長い蔓が握られている。 床に伸びた蔓の長さが一体どれくらいあるのか、美緒都には見当もつかなかった。 蔓には、随所に白い薔薇の花が咲いている。 そして……緑色の蔓の一面に、びっしりと鋭く尖った棘が生えていた。 異様に光る目でねっとりと美緒都を絡めとり、男は意味深な微笑を口の端(は)に刻んだ。 「これは、特殊な薔薇の蔓だ。この棘は鋼の硬さを備えている」 男の残酷な意図を悟り、美緒都は息を呑んだ。
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