第2章

2/20
前へ
/108ページ
次へ
「隼人~、カラオケ行こうぜ」 授業が終わるやいなや、お調子者の清原が背後から声をかけてきた。 「悪い、パス」 ふりむきもせずに断り、隼人はぺちゃんこの鞄を小脇にかかえた。 「つきあい悪いじゃん。また、美緒都を捜しに行く気?」 清原は隼人の前にまわりこみ、何か言いた気な表情で隼人の顔を上目遣いに見た。 「知ってんなら、訊くな」 にべにもない口調で言って、隼人は清原の脇をすり抜けようとした。 その腕を、清原が素早く掴む。 「もうよせよ。ひと月も経ってんだぜ」 一瞬で真剣な表情に変わった清原の目が、諦めろと告げていた。 どす黒い炎のような怒りが胸を灼き、隼人は突き刺すような眼差しで清原をねめつけた。 「美緒都は生きている。二度とそんなことを言うな」 低い、押し殺した声だった。 漆黒の髪の間からのぞく鋭い切れ長の双眸が、憤怒に燃えてまっすぐ清原を射すくめていた。 その迫力に気おされたように、清原が手を離した。 隼人は、プイと身を翻して教室を出た。
/108ページ

最初のコメントを投稿しよう!

222人が本棚に入れています
本棚に追加