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気がつくと、美緒都(みおと)は霧の中を歩いていた。
濃い霧が視界を白く覆い、何も見えない。
時折、白いベールのように、霧が美緒都の頬をなぶって横に滑っていく。
(どこだろう、ここ……)
切れ長の瞳に抑え切れぬ不安を滲ませて、美緒都は周囲を見回した。
ほっそりと華奢なその立ち姿は、息を呑むほど美しい。
なめらかな白い肌はキメが細かく、まるで少女のようだ。
長い睫にけぶった切れ長の双眸は、不安気な中にも凛とした矜持を感じさせる。
スッと細い鼻梁と小さな薄い唇は、上品そうな印象を見る者に与えた。
柔らかな栗色の髪がふわりと目もとにかかり、あでやかな美貌をいっそう際立たせている。
はだけた胸を見なければ、少女と間違えただろう。
年の頃は15、6。
見る者の心を一瞬でとらえる、蠱惑的な美貌だった。
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