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(どこだろう、ここは……)
もう一度胸裏につぶやいて、美緒都は慎重に歩を進めた。
何も、思い出せない。
覚えているのは、自分の名前だけだ。
ここがどこなのか、なぜ自分はここにいるのか、まったくわからないだけに、いっそう強く不安が胸を締めつけた。
……カーン……カーン……
かすかな鐘の音が聞こえた。
次第に、近づいてくる。
やがて、霧の中に、建物の黒いシルエットが浮かびあがった。
……教会……?
いや、違う。あれは……
行く手に現れたのは、壮麗な城だった。
まるで、中世ヨーロッパのような……
誘いこまれるように、美緒都は城へと近づいていった。
両開きの木製の扉が、軋んだ音をたてて開いた。
入っちゃいけない!
引き返せ!
心の中で、警鐘が鳴っている。
だが、心とは裏腹に、美緒都はふらふらと扉の中へ足を踏み入れた。
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