第1章

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ひんやりした大理石の床の感触が、美緒都に、自分が素足なことを思い出させた。 立派な城だ。 高い天井から重そうにさがる幾つものシャンデリア、幅の広い大理石の螺旋階段、奥の壁に並ぶ精緻なレリーフが施された扉。 カツン! ふいに、硬い靴音が響き、美緒都はびくっと身をすくませた。 螺旋階段を、長身痩躯の人影が降りてくる。 逃げろ! 早く! あいつに捕まったら…… 再び、心の奥が不穏にざわめいた。 しかし、美緒都は金縛りにあったように動けなかった。
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