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なんだか毎日が鬱だった。 ケータイだから鬱って打てるが実際は書けない。 もっとも書く必要もないのだが、小難しい漢字ばかりを一生懸命近所の壁にスプレーで練習してた同級生のなんだかこっちがこっぱずかしくなるような服装を見てそいつの将来を案ずる位鬱だった。 私はとある仕事をしているのだが、一応部下にあたる人間を何人か抱えている。 みんな教えた仕事はきちんとこなし、ちゃんとやってくれているのだが、やはり成長速度や仕事に対する考え方はそれぞれのようで、偉そうな事は言えないが、問題児もいる。 その問題児はKという。 一緒の時間に入ると他の従業員達と騒ぎを起こすのではないかとたまに冷や冷やさせられたりする。今日もこいつと一緒かと思うと鬱だった。 ただ最近噂によるとどうもKの様子がおかしい。 のだそうだ。 いや待てそんなのいつもの事じゃないかと言いかけたその時… 「どうもなんか幽霊に取り憑かれてるらしいですよ?」 やたらメタボリックな部下がそんな事を言ってくる。 …取り憑かれるってあんたね…いい歳して何言ってんだか。 「僕見たっていうか見えたんですよ~?なんか女の人だったなぁ~」 メタ坊が続ける。 幻覚じゃね~の? 「まぁどうでもいいけど」 そういえばこのメタ坊、前に霊感があってどうとか女の子達と騒いでたなぁ? しかし幽霊とか…ないだろ~w まぁチャラいKの事だし女には確実に恨み買ってそうだよな。 事実Kについての噂はあまり良いものではなかった。 バンドを組んでいてボーカルをしているらしいのだが、どうしてなのか分からないがモテるらしく、女をとっかえひっかえしているだとか、不特定多数の女と交際しているだとか、そんな噂は毎日聞いた。 「なんであいつが女にモテるんだ?」 事務所に貼ってあるKの写真を見ながら呟く。 相当なスケコマシ(?)か…気持ち悪いヤツだな。 振り向くと例のスケコマシが遅刻してヘラヘラと立っていた。 「っはよざぁーっす!さーせんw遅くなっちゃいやした!すぐ行きます!」 …呪われればいいのに…顔をマジマジと見るが、全然タイプじゃない。 「分かりました。打刻はしなくていいです。遅刻なので書いておきます。」 冷たく言い放ち事務所を出る。
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