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自分はただ、泣き崩れる母親と、自分をギュッ、と抱き締めてうつむくサヤちゃんへ、"泣かないで"と鳴くことしか出来なかった。
「オレだって被害者なんだっつぅの!なんだよ刑事さんっ」
黙れ、と叱咤される男は、そりゃあさあと頭をかいて、呟く。
「逃げたのはワルイけど…でも、突っ掛かってきたのはあの男どもだっ、ナンクセつけて、俺をボッコボコにしやがった。どうしてあいつらを捕まえないんだよ!」
その若い男は、続けて叫ぶ。
「あいつらがどっかのおエラ方の身内だからかっ?俺、知ってんだよ、自慢気に言っていやがったんだ、『俺の父親は、代議士なんだぜ』って!だから、サツにパクラレたりしないんだって……!」
うるさいっ、と一喝されながら、刑事2人に連行される男の後ろ姿を、自分は、じっと見つめていた。
蒼い2つの瞳で。
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