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「…ん…」
目を覚ますと汚れた着物から寝間用の浴衣に着替えさせられており、布団もきっちり肩までかけられていたところを見ると夜、伽羅俐が来てくれたのだろう。そう思うと疲れを忘れて頬が緩んでしまう。
「お目覚めですか、桜華様。」
顔を上げると伽羅俐がいた。かしづいて私に声をかける。
「…お、はよう…ございます…。今日の予定は…?」
挨拶とともに頷いたのかも分からない位のお辞儀をし、ふわふわと未だ覚醒仕切れていない意識のなか今一呂律の回りにくい舌でお決まりの質問。
瞼も未だ上手く上がらないのに最初に頭に浮かぶのが仕事の事だなんて皮肉だ。
「今日の始めの御予約は18時からで、その後はお休み無しに立て続けに5人のお相手、上がりは1時です。」
無駄の無い完璧な返答。私の付き人は今日も優秀だ。
ありがとうと言って立ち上がる。また着替えて猪口冷糖の様子を見に行かなくてはならない…が、伽羅俐に付いて来られては元も子も無いので着替えを手伝おうと着物を出す、問題の張本人を制止した。
「待って下さい、出来る事は自分でします。後、私は着替えが終わると行くところがありますが付いて来てくれなくて大丈夫ですから、伽羅俐の今日の仕事は私の仕事が始まるまでありません。」
「お言葉ですが桜華様、俺の仕事は貴方の護衛。もし貴方に何かあっては…」
手引書を読んだ様な応え。
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