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新たな旅立ち
フランスでの修業を終えたあるシェフは新しく料理店を開くため、妻を連れ添いお店に相応しい物件を探す旅をしていた。
歩き疲れ果てていたそんな二人の足に絡む様に体を擦っては鳴きながら何かを求めている仔猫に遭遇する。
マダムはとっさに抱きかかえたが、その腕を振り解き、今度はそのネコが二人の水先案内人となってトコトコと歩き出した。
二人は誘われる様に後をついていくとそこは空き家だった。
「どうやら、この仔猫ちゃんの家らしいな!」
「そうね、でも、普通の戸建てでは無さそうよ。」
二人のそんな会話をよそに、その仔猫はいつもの玄関の庇へひょいと飛び乗ると二人を、ジッと見つめて催促でもするかのように「ニャン」と一言だけ鳴くとその場で丸まってしまった。
暫く二人は辺りを物色した後、
「ここ、いいんじゃ無いか?」
「私たちの希望どうりの庭付きよ!テナント募集の看板を見つけたわ。」
二人の会話はやっと辿り着いた希望の舞台が見つかった喜びを確かめあった。
こうして、二人の新たな舞台は決まり、可愛らしいオマケも付いた。仔猫は「リリー」と名付けられた。そして、この仔猫の可愛らしさに因んで、そのレストランは「ル シャルム」と名付けられた。
やがて、6年の月日が過ぎて行った 。
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