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かりそめの『過去』
今日はずっと早足で歩かされ続けてるから、いい加減つかれる。
私より背の高い日照くんは、当然私より歩幅が広い。
私より長い足でズカズカ早く歩かれたら、どうしたって早足でついていくしかない。
日照くんが選んだ店に入るころには、疲れて抵抗する気力もなかった。
選んだと言っても、ファミレス。
映画の時間の都合で今はもうピークタイムを過ぎているせいか、店内は空いていて待たされずに席に案内された。
お互いに無言でメニューを広げ、先に食べたいものが決まったのは私。
私がメニューを閉じたのに気付いた日照くんが、それから少しして呼び出しボタンを押した。
注文を済ませ、向かい合って座っているのにどうしていいかわかんないこの空気。
そしてこの状況。
気まずいとしか言いようがない。
何が特に気まずいって、日照くんがなにを思ってるのか表情が読めないことと、相も変わらず無口ってこと。
向かい合って座ってるのに会話がないって、どう考えても気まずすぎ。
「あのー」
仕方ないから頑張って私から話しかけてみた。
私の声に、どこを見てるのか分かんなかった日照くんが私を見る。
「罰ゲームはこれでおしまい?」
「は?」
・・・普通に訊いたはずなのに凄まれた・・・気がする。
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