かりそめの『過去』

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重苦しい空気の中それでも2人して何とか料理を食べ、伝票を掴んでレジに向かう日照くんの背中を追いかけて財布を出そうとすると、お金を払うことを拒否された。 全部無言で。 早く食べ終わる料理にしておいて良かったってすっごく思った。 「ごちそうさまでした」 ファミレスの外に出て、ようやく言葉を口から出すと無言で頷いた日照くんが手首を掴む。 もう大体慣れてきたし諦めもついたけど、手を引っ張られてただついていく。 どこまで行くんだろうって思ってると、着いた場所は駅の近くにある公園だった。 遊具がほとんどなくて、ベンチも少ないせいか人がほとんどいない。 小さな屋根付きのベンチが1か所だけあって、迷わずに日照くんがそこに向かった。 手を引かれるままにベンチに座ると、日照くんはうつむき加減で私の右斜め前に立ったままでいる。 私が、座る?って訊くのも変だし黙って日照くんを見てた。 少しして日照くんが顔を上げて 「あのさ、中学の時のこと、悪かった」 短く区切りながら言う。 「なんで日照くんが謝るの?迷惑かけたのは兄貴と私じゃん」 さっきからなんで謝られるのか本気でわかんない。 謝るのは私のほうだと思う。 「そうじゃなくて」 歯切れの悪い日照くんが言いにくい何かを言おうとしてることがわかって、黙って聞いてみる。
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