かりそめの『未来』

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かりそめの『未来』

確かに、日照くんに言われて振り返ると 「似合わない」 「ブス」 あたりの暴言は、私がギャル化してから始まった。 ・・・気がする。 「うそ」 つるりと口から出た言葉に、日照くんがすかさず 「嘘じゃねーし」 否定してくる。 「お前が無理に変わってくのが、相当イヤだったらしい」 「だからって・・・」 暴言を受け続けた私としては、受け入れられない。 「確かにクソ真面目だし地味だったけど、亘夜先輩はお前のこと可愛がってた」 「うそ」 「学校で廊下からアレが妹だって声をかけてんのは、くだらない男が寄ってこないように牽制してる」 「寄ってこないよ」 あの兄貴の妹ってことで敬遠されて、同じクラスの男子ともそんな仲良くないし。 「だから、そうなるように亘夜先輩がしてんだろ」 「うそ」 すっごく混乱してて、日照くんの言ってることが頭に浸透していかない。 兄貴が? 本当に? 「ホント。だから、俺も今日までかかった」 「なにが?」 「亘夜先輩がお前に近付いてもいいって許可くれるまで」 「はぁ!?」 混乱しすぎて頭が真っ白。 焼き切れたみたいに働かなくて、ただ喋る日照くんを見た。
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